【1999-3】携帯電話電磁場のヒト中枢神経への影響に関する研究─中枢神経部位における吸収電力の評価─

研究目的

携帯電話の電波による人の中枢神経(聴覚神経、体性感覚神経)への影響の検討として、電波が脳の中枢神経にどの程度吸収されているかを定量的に評価するため、複雑な組織構造を模擬した人体頭部の数値モデルを用い、脳内の詳細なSAR分布を求めました。

研究内容

本研究では携帯電話の電波による頭部のSARをFDTD法(有限差分時間領域法、Finite-difference time-domain method; FDTD method)により計算で求めました。人の頭部のモデルとして名古屋工業大の藤原らが開発したモデル(以下、名工大モデル)とVisible Human Projectモデルの2種類の頭部モデルで計算を行いました。また携帯電話のモデルとして送信周波数900 MHz、平均送信電力は0.13 W(最大0.8 W)を仮定しました。

研究結果

検討した2つの頭部モデルのいずれの場合でも、頭部における最大10g平均SARは0.5 W/kg前後であり、聴覚中枢付近におけるSARは0.3 W/kg程度、体性感覚野では0.001~0.2 W/kg、手の感覚部位では0.1 W/kg程度との結果が得られました。

この結果から、聴覚中枢や体性感覚野などの感覚部位が携帯電話の電波により、直接、加温されることは考えにくいことがわかりました。

本研究から派生した論文

Wang J, Fujiwara O. Dosimetric evaluation of human head for portable telephones. Electron Comm Jpn Pt 1 2002;85(7):12-22.