比吸収率(SAR: Specific Absorption Rate)および電力密度(Power Density)とは
比吸収率(SAR: Specific Absorption Rate)とは
おおむね100kHz以上の周波数の電波が人体に当たると、エネルギーの一部は人体に吸収されて熱に変わります。そのエネルギーの吸収量を表すために、比吸収率(SAR: Specific Absorption Rate)という評価指標が用いられます。
スマートフォン・携帯電話など人体のそばで使用する小型無線機においては、人体の特定の部分でエネルギーの吸収が起こるという特徴があります。
局所SAR
100kHz以上6GHz以下の周波数については、無線設備規則によって、スマートフォン・携帯電話端末を頭部に近接して使用する場合および頭部以外の人体に近接して使用する場合に、電波防護指針に基づく「局所SAR」の基準値※1を満たすことが義務付けられています。
局所SARとは、人が電波にさらされたときに任意の10g当たりの組織に6分間に吸収されるエネルギー量の時間平均のことであり、W/kgの単位で表されます。組織10gはおおよそ一辺2cmの立方体に相当します。この周波数では一定の深さまでエネルギーが吸収されるため、このような評価指標になっています。
※1 2W/kg、四肢では4W/kg
入射電力密度
6GHzを超え300GHz以下の周波数については、無線設備規則によって、スマートフォン・携帯電話端末を頭部に近接して使用する場合および頭部以外の人体に近接して使用する場合に、電波防護指針に基づく「入射電力密度」の基準値※1を満たすことが義務付けられています。
入射電力密度とは、人が電波にさらされたときに任意の体表面の一定面積を6分間に通過するエネルギー量の時間平均のことであり、mW/cm2またはW/m2の単位で表されます。この周波数では、体表面でのみ電波が吸収されるため、このような評価指標となっています。6GHzを超え30GHz以下では4cm2、30GHzを超え300GHz以下では更にエネルギーが集中する傾向があるため1cm2を平均面積とします。
※1 2mW/cm2
*総務省「電波防護のための基準の制度化(関連法令)」
https://www.tele.soumu.go.jp/j/sys/ele/medical/system/ より引用
局所SARおよび入射電力密度の測定方法は?
局所SARおよび入射電力密度の測定方法は、総務省告示によって規定されています。特に局所SAR測定方法は、人体表面から深さ方向のエネルギー吸収を模擬するために「ファントム」と呼ばれる人体模型を用いており、欧米諸国も採用している国際標準と同様です。
測定する際には、スマートフォン・携帯電話の送信電力を最大にします。一方、実際に通話等を行っている状態では、スマートフォン・携帯電話は必要最小限の送信電力で基地局と通信するので、実際の局所SARや入射電力密度は測定値よりも小さい値となります。
局所SARおよび入射電力密度は小さいほうが良いの?
局所SARおよび入射電力密度の基準値には十分な安全率が考慮されています。この基準値以下であれば局所SARおよび入射電力密度の値の大小に関係なく、スマートフォン・携帯電話を安心してご利用いただけます。