電波防護指針とは

電波防護指針とは、電波の人体に対する安全性の基準のことです。我が国では、平成2年と平成9年に、総務省(旧郵政省)電気通信技術審査会が、過去40年以上にわたる国内外の研究結果に基づいて、10kHzから300GHzまでの電波を対象にまとめられました。また、最新の研究動向等を踏まえ、平成27年には低周波領域、平成30年には高周波領域について、それぞれ改定されています。 電波防護指針は、国際的な指針とほぼ同じ値であり、人体への影響を考慮した十分に安全な値となっています。

電波防護指針を構成する、基礎指針と管理指針

電波防護指針は、基礎指針と管理指針から構成されています。

基礎指針 ~人体の安全性評価の基準~

基礎指針は、電波の生体作用(刺激作用と熱作用)を考慮した人体の安全性評価の基準となる指針です。例えば基地局からの電波の場合、全身平均SARで評価を行いますが、約4W/kg以上になると熱作用により人体に影響が出るため、10倍の安全率を考慮し0.4W/kg以下であることが定められています。

なお、SARとは、生体が電磁界にさらされることによって単位質量の組織に吸収される電力のことで、 比吸収率とも呼ばれます。SARを全身にわたり平均したものを「全身平均SAR」といいます。また、人体局所の任意の組織1gまたは10gにわたり平均したものを「局所SAR」といいます。

管理指針 ~基礎指針を満たすための物理量~

管理指針は、基礎指針を満たすための実測できる物理量(電界強度等)を定めたものです。管理環境と一般環境に分けて規定しています。

両者の違いは、管理環境は電波を職業的に取り扱う人を対象とし、一般環境はそれ以外の一般の人を対象として定められている点です。一般環境下では電波使用環境が管理環境よりも管理状況が劣る場合を考慮し、基礎指針に対してさらに安全率を付加した0.08W/kg以下の全身平均SARを満たすことが定められています。つまり、一般環境の管理指針は十分な安全率が考慮されています。この安全率は国際学術組織である国際非電離放射線防護委員会(ICNIRP)でも同じです。

電波の広がりの図