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総務省「生体電磁環境に関する検討会」の研究成果
総務省は2008年から「生体電磁環境に関する検討会」を開催し、電波の安全性について調査研究を実施し、2015年7月1日に現時点での見解を第一次報告書に取りまとめ公表しました。本報告書の中で、平成19年度以降のものの概要※1について次のように公表しています。
※1 http://www.soumu.go.jp/menu_news/s-news/01kiban16_02000095.html
(1) 疫学研究・アンケート調査
■ 携帯電話の電波ばく露に関わるヒトの症状に関する研究(平成19〜20年度) |
→ | 携帯電話端末からの電波ばく露が、健康に関する症状や愁訴を引き起こしたり、心理的・生物学的な状態の変化をもたらす可能性があるといえる証拠は得られなかった。 |
■ 小児・若年期における携帯電話端末使用と健康に関する疫学調査(平成19〜21、22〜24年度) |
→ | 小児・若年期の携帯電話端末使用による脳腫瘍発症リスクへの影響分析に必要な情報を収集した。今後はスマートフォンやWiFiなどのばく露影響についても研究の推進が必要。 |
■ 成人の携帯電話使用者の追跡調査研究 |
→ | 携帯電話使用による脳腫瘍等の関連性評価は、100万人規模の調査が必要であり、費用・労力の点から、わが国での実施の可能性は低いものと考える。 |
(2)脳組織・脳機能への影響
■ 2GHz電波全身ばく露による多世代にわたる脳の発達および機能への影響(平成19〜21年度) |
→ | 3世代に亘るラットにおいて、発育、脳の発達・機能(行動、学習・記憶)、生殖機能のいずれにも、電波ばく露の影響はみられなかった。 |
■ 脳内免疫細胞に及ぼす電波ばく露の影響評価 |
→ | 「電波防護指針」の一般環境規制値を上回る電波の長期ばく露で、ラット脳のグリア細胞への影響は認められなかった。 |
■ 頭部局所ばく露の及ぼす生体影響評価とその閾値の検索 |
→ | ラットを用いた実験において、脳局所電波ばく露が局所脳血流の増加を惹起し、脳局所温度上昇に起因している可能性が示唆された。 |
(3)眼球、眼部への影響
■ 携帯電話端末からの電波によるヒトの眼球運動への影響(平成19〜21年度) |
→ | 30分間の携帯電話からの電波ばく露は、眼球運動の抑制及び眼球運動の神経機構に影響を与えない。なおかつ、頭頂葉・前頭葉の機能も影響されない。 |
■ ミリ波、準ミリ波帯電波の眼部ばく露による影響の指針値妥当性の再評価(平成19〜22年度) |
→ | 18-40GHzでは周波数が高いほど眼内での発熱は高温となり障害を及ぼすが、防護指針値のばく露では眼障害を生じないことが示された。 |
■ 電波ばく露による眼部の定量的調査 |
→ | 電波ばく露による眼障害には周波数特性があるが、電波防護指針値以下では障害は誘発されない。また、細胞への非熱的条件の長時間ばく露で、遺伝的影響はばく露群とシャムばく露群で統計的優位差は確認されなかった。 |
(4)睡眠への影響
■ 携帯電話端末からの電波の睡眠に対する影響 |
→ | 携帯電話からの電波が睡眠に影響するということを指示する結果は得られなかった。 |
(5)細胞生物学的影響評価
■ 電波の細胞生物学的影響評価と機構解析 |
→ | 高周波電波による熱ショックタンパク発現への影響は無いか、極めて小さいものと考えられる。また、低出力電波によって遺伝子の発現が変動する可能性は小さいと考えられる。 |
■ 免疫細胞及び神経膠細胞を対象としたマイクロ波照射影響に関する実験評価 |
→ | サイトカイン分泌量、遺伝子の発現量について、統計学的に有意な影響を及ぼしていないと考えられる。 |
■ ミリ波帯細胞用ばく露装置と物理的環境の検索 |
→ | 60GHzのミリ波帯電波の細胞用ばく露装置を開発し、ばく露量、温度が統制された条件で再現性の実験を行う手段を確立した。 |
(6)胎児への影響
■ 電波のラット胎児造血器への影響評価 |
→ | 「電波防護指針」の一般環境規制値を上回る強さの頭部短期ばく露においても、胎児造血器は有意な影響を受けないことが示された。 |
(7)免疫機能への影響
■ 免疫システムの機能とその発達における電磁環境の影響に関する研究 |
→ | 幼若動物や細胞を用いた研究において、免疫系への電波の影響は見られなかった。 |
(8)複数の電波ばく露による生体影響
■ 複数の電波ばく露による電波複合ばく露の生体への影響 |
→ | 発育、行動、学習・記憶及び生殖機能のいずれに対しても、複数電波ばく露の影響はみられなかった。 |
(9)ドシメトリ※2
■ 小児に対する人体全身平均SARと体内深部温度上昇の特性評価 |
→ | 乳幼児の全身平均SARは成人よりやや高くなるものの、成人と体形が異なり外気で冷却されやすく、体内深部温度上昇は小さくなるとの結論が得られた。 |
■ 複数の電波ばく露による電波複合ばく露の生体への影響 |
→ | 広い周波数帯に亘り体内深部温度へ与える影響は、簡易推定式で得られた結果で評価でき、複数波を入射した場合でもその傾向は変わらないことが確認された。 |
■ 中間周波数帯の電磁界と人体との間接結合に関する影響調査 |
→ | 接触電流において、現在の防護指針で中枢神経系及び心臓など重要組織は防護されていることが確認された。 |
※2 ドシメトリ
電波のドシメトリでは、「ばく露量評価」の意。電波にさらされた人体等に誘導された非吸収率や温度上昇を定義することをいう。
(10)電磁界強度指針の妥当性評価
■ 実験に基づく電磁界強度指針の妥当性評価及び確認 |
→ | 測定で得られた全身平均SARは、国内外研究機関の計算推定結果とほぼ一致し、計算推定の正しさが確認された。 |
(11)安全性に関する評価技術
■ 電波の安全性に関する評価技術 |
→ | 人体内の電波吸収量の計測技術、電波防護指針への適合確認技術、ばく露装置などを開発し、これら技術は国際標準化や国内規制に反映されるとともに、数値人体モデルのように他の研究分野でも活用が期待されている成果が得られた。 |
■ 電波の人体への安全性に関する評価技術(基準適合性評価方法の開発・数値解析モデルの精密化) |
→ | 100種類以上の生体組織の電気定数測定データベースの構築、スマートフォン等の最新携帯電話端末のSAR測定手法やMIMO無線システムのSAR測定手法について検討し、国際標準化活動に寄与した。 |