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総務省「生体電磁環境研究推進委員会」の研究成果
総務省では、1997年10月に、電波の生体安全性評価に関する総合的な研究・検討を目的として「生体電磁環境研究推進委員会」を組織して、様々な調査研究を実施し、2007年3月26日に委員会最終報告を取りまとめ、研究成果の概要※1を次のように発表しています。
また、これらの研究成果に対する総務省の見解を8章の総務省の見解に記します。
※1 http://warp.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/283520/www.soumu.go.jp/s-news/2007/070427_12.html
(1)ヒトへの短期的影響~
■ 神経生理学的影響・携帯電話のヒト眼球運動への影響に関する研究 | ||
① 携帯電話の人体に対する影響(神経生理学的影響) |
→ | 30分間の携帯電話使用は、中枢神経の複雑な連絡に大きく影響しない。 |
② 携帯電話のヒト眼球運動への影響に関する研究 |
→ | 電波ばく露前後で有意な変化は認められなかった |
■ 携帯電話基地局からの電波による症状に関する研究 |
→ | 携帯電話使用に伴い発生する健康障害に関係する症状が、電波ばく露と関連があるとの証拠は得られなかった。 |
(2)疫学研究
■ 日本における国際共同疫学研究 |
→ | 携帯電話使用による聴神経鞘腫の発症リスク増加は認められなかった。 |
■ 症例対照研究の解析を補完する携帯電話利用者のばく露評価 |
→ | 特別な端末で記録された通話時間データと照合によって症例対照研究(インタービュー調査)の妥当性を確認した。 |
■ 新たな疫学的アプローチの必要性と実現可能性に関する予備的研究 |
→ | 小児における脳腫瘍の疫学調査としては、成人と同様に症例対照研究が第一候補として考えられる。ただし、症例数が成人と 比べて少ないため、全国レベルでの調査が必要であり、そのための課題も多い |
■ 携帯電話使用と健康に関するケースオンリー研究など |
||
① 聴神経鞘腫の症例を対象としたケースオンリー研究 |
→ | 聴神経鞘腫の801症例の参加を得て、腫瘍の左右位置と携帯電話の利用側との相関を分析できるデータセットを完成した。 |
② 携帯電話利用の側性調査の妥当性評価 |
→ | 携帯電話を左右どちらで使用するかという質問に対する回答の正確性が高くないこと、特に右という回答の信頼性が低いことが明らかになった。 |
(3)発がんへの影響
■ 脳腫瘍に対する長期局所ばく露実験 (1.5GHz) |
→ | ラット中枢神経系腫瘍発生に対し、電波(1.5GHz帯携帯電話信号)の頭部局所的長期間ばく露は影響を与えないことが確認された。 |
■ 脳腫瘍に対する長期局所ばく露実験 (2GHz) |
→ | ラット中枢神経系腫瘍発生に対し、電波(2GHz帯携帯電話信号)の頭部局所的長期間ばく露は影響を与えないことが確認された。 |
(4)脳微小循環動態への影響
■ 電波照射の脳微小循環動態に及ぼす生物学的影響評価 |
→ | 急性影響評価及び亜慢性影響評価実験を実施した結果、血液-脳関門(BBB)透過性、白血球挙動、血管径及び血流速度への電波ばく露影響は認められなかった。 |
■ 電波照射の脳微小循環動態に及ぼす影響の直視的評価と加齢性変化に関する研究 |
→ | 幼若ラット及び成熟ラットともにBBB透過性及び白血球挙動への電波ばく露影響は直接的観察によっても認められなかった。 |
(5)脳組織・脳機能への影響
■ 電磁波ばく露による生物学的影響に関する研究(血液・脳関門への影響) |
→ | 電波防護指針値の数倍を上回るSARの電波をばく露してもBBBの透過性へ与える影響は認められなかった。 |
■ 高周波ばく露による生物学的影響に関する研究(記憶・学習への影響) |
→ | 電波防護指針値の数倍を上回るSARの電波をばく露しても記憶・学習に与える影響は認められなかった。 |
■ 高周波ばく露による生物学的影響に関する研究(睡眠への影響) |
→ | 電波防護指針値の数倍を上回るSARの電波をばく露しても睡眠に作用するメラトニン生合成に有意な影響は認められなかった |
■ 高周波ばく露による生物学的影響に関する研究(内分泌攪乱作用) |
→ | 電波防護指針値の数倍を上回るSARの電波をばく露しても内分泌攪乱様の作用は認められなかった |
(6)眼球への影響
眼球への影響 | → | 防護指針値程度の2.45GHz及び60GHzの電波ばく露が、眼に対して急性ばく露障害を与えるという結果は得られなかった。 |
(7)細胞生物学的影響評価
■ 物理的検索 |
→ | 電波防護指針値内のSARの電波ばく露により、影響が生じることはないことが確認された。 |
■ 生物学的検索 |
→ | 通常使用されている携帯電話のSARレベルにおいて、短時間ばく露での細胞への影響は無いものと示唆される。 |
(8)生体ラジカル
生体ラジカル※2 | → | マイクロ波照射の非熱影響によるラジカル発生はみられなかった。 |
※2 生体ラジカル
生体内で発生する、他の分子から電子を奪い取る力が高まっている原子や分子のこと。病原菌を退ける等、生命維持にとって重要な役割がある。
(9)ドシメトリ※3
■ 人体全身平均SARの特性評価 |
→ | 現在の電波防護指針が高精度な小児/成人モデルを用いた大規模計算の結果と概ね整合していることを確認した。 |
■ パルス電波の生体安全評価に関する検討 |
→ | パルス電波により生体に影響を与えるという証拠は認められなかった。 |
※3 ドシメトリ
電波のドシメトリでは、「ばく露量評価」の意。電波にさらされた人体等に誘導された比吸収率や温度上昇を定量することをいう。